ヒエログリフ
古代エジプト文字、ヒエログリフのススメ。
読めれば、書ければいいな。
基本を知ろう アルファベットで
覚えよう
よく見る単語を
覚えよう
感覚を磨こう

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 歴史やら、細かいことは、本に任せて。
 「ヒエログリフ」について、簡単なことは、『文化・思想』のページに書きましたが、
 もう少し、具体的に、
 古代エジプトの文字、ヒエログリフについて、お話します。

 
●基本を知ろう●
 まずはヒエログリフがどんな働きをしているかについて、「テキトーに」説明します。

(1)漢字に似てる?       ▲ページトップへ▲

 身近(?)なものに例えると、漢文。
 でも、その中の大半の字は、漢文とは違い、意味がなく、音だけを表すものです。
 私たちが普段使っている文字は、この通り、
 ひらがな(やカタカナ)と、漢字を組み合わせていますが、
 ヒエログリフは、
 この、ひらがなの部分も、漢字で表しているようなものです。
 「紺菜風似。」(念のため、「こんな風に。」と書いているつもりです)
 もうお気づきでしょうが、この言葉の意味に、「紺」色も、野「菜」も、「似」てるとかいうことも、まったく無関係ですよね。
 だから、慣れないと、どこが「ひらがな(表音)」部分なのか分からなくて、とっつきにくいんですよね。

(2)単語の区切り「決定詞」       ▲ページトップへ▲

 ただ、音を表す字ばっかりだと、
 同じ発音のものが、区別できなくなってしまいますよね。
 そのためにあるのが、「決定詞」と呼ばれるものです。
 だいたい、単語の後について、その言葉(音)の意味を教えてくれます。
 ただ、「直接」あらわしているものは少なく、だいたいが、それを連想できるようなものになっています。
 
日本語で表すと、たとえば
 ●「はし」という字(は=ハ+し=士と表すことすると)。
 「ハ士」=端っこ、 「ハ士」=橋(川にかける)、「ハ士」=箸(食事に使う)
 ●さらに、「くも」(く=久+も=茂)。
 「久茂」=雲(空にあるもの)、「久茂」=蜘蛛(虫だから)
 ●「あめ」だと(あ=亜+め=目)、
 「亜目」=雨(空からふる)、「亜目」=飴(食べ物だから)

というふうに、赤い色で表した部分が、決定詞の役割です。
 決定詞は、その音を持つ単語の、意味の“種類”を教えてくれるもので、
 基本的には、読みません。
 ただ、上記の「端」のようなものの場合、字と意味が同じですよね。
 こういうような、漢字と同じ「意味を表す文字(表意文字)」も、いくつかありました。
 数はそんなに多くないので、
 その辺は、慣れればどうにかなります。たぶん。

 だいたい、雰囲気つかめてきたでしょうか?
 
☆具体例1:猫=「ミイウ」。後ろの猫の絵が、決定詞です。
       2:冷たい=「ケベフ」。後ろの水が出てるツボが、冷水を表す決定詞。
       3:夜=「ゲレフ」。後ろの空に何かが刺さってる(?)のが、決定詞。
       4:美・善い=「ネフェル」。はじめの、楽器みたいなやつ(心臓?)は、表意文字で、読み仮名をふってるパターン。
       5:空=「ペト」。下の天井の絵は、やはり表意文字で、読み仮名をふっています。
   作るのが面倒なので、フォントにあったやつだけ(汗)…なんでこんなチョイスなのか…。

(3)文の方向        ▲ページトップへ▲

 ヒエログリフは、縦書き、横書きどちらも出来る上、
 右からでも、左からでも、書く事が出来ました。
 見た目が重要だったためで、
 扉の周りにかかれるときなど、中心から始まって、ほぼ左右対称になっている事が多かったりします。

 では、どちらから読むか、見分けるには?

 文の中に、鳥か、人か、蛇などを探してください。
 その顔が向いているほうが、文の始まる方です。
 ヒエログリフの動物たちは、「ほら、あっちあっち。あっちから読むんだよ!」と教えてくれます。
 あとは、だいたい線が引いてありますから、
 上から下へ、順番に。


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 まず、アルファベット風に、
 一つの音を持つヒエログリフを、覚えましょう。
 これだけでは、全く「読む」ことはできないのですが、
 これを読めないことには始まりません。


●アルファベットで覚えよう

(1)名前を書いてみよう

 よく見られる表を、載せておきます。
 ローマ字で遊ぶような感覚で、
 まず、自分の名前とか、身近な言葉を、ヒエログリフで書いてみましょう。

 注意するところは、
 古代エジプトでは、母音「aiueo」を表すことができません
 表の通り、「a」「i」「u」と読ませる事が出来るものもありますが、
 「o」はないので、代わりに「wa」(「クレパトラ」で使われてた字=1子音文字ではない)、
 「e」はないので、「y」で代用するのも手です。
     ▲ページトップへ▲
a i w

※はじめに来るとき
「ア」と読むことも。

(省略形)
aa「アー」 y

(省略形)

dj
(ジャ・ジュ・ジョ)
wa(オ)

kh
または
(z)
強めのk 強めのkh sh
(シャ・シュ・ショ)
tj
(チャ・チュ・チョ)

強めのh
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☆具体例
 「あやめゆうき」でやってみます。
 まず、ローマ字に直してみましょう。
 「ayameyuuki」
 このうち、「u」は「w」に、「e」はないから……「y」にすると、yばっかり続いてなんか嫌だし、省略。
 あとは、とりあえず書いてみて、見た目勝負です。
 同じ読みの字もありますから(省略形とか)、まとめてすっきり見える形になればよし、ということで。
 結局、「ayaamywky」となりました。
 最初の「ya」の「a」が「aa」なのも、最後の「ki」が「ky」なのも、ぜんぶ見た目のためです(笑)。
 このまま読むと「あぃやむぃーうきぃ」になりますが、
 まあ、なんとなく通じそうなので良しとしましょう。

 こんなもんですよ!! 今はね!

 ちなみに、「基本を知ろう」で具体例に挙げた単語も、もう読めるはずです。
 「猫」のはじめの単語(ミルクつぼを表す)は、「mi」です。このサイト名にも使ってる…。


(2)実際つづられた名前を、書いてみよう     ▲ページトップへ▲

 ローマ字風にヒエログリフを使っていると、
 飽きてきませんか?(笑)
 日本語と音が違いすぎて、使うものに偏りがあって、
 並べてみても不恰好。本当はこんなのじゃない!
 じゃあ、実際使われた字、遺跡や博物館でも「読める」字を、書いてみましょうよ!

 ●王様の名前を書こう!
 ギザの大ピラミッドで有名な、クフ王。
あ、縦で作っちゃった…。ま、実際に見ることはあまりないかも…。
他にも、
 ペピ(ppy)、テティ(tti)、王以外の人名でも、セネブ(snb)、カウィト(kawit)など、
 ぜんぶ、上の表の字で書けてしまいます。

 ●神様の名前を書こう!
 国家神、太陽神ラー。(太陽を表す文字は必須、最後の座っている人は神を表す決定詞)
 これはよく見ますよ!是非覚えてください。
他にも、
 プタハ神(pth=「h」は強い発音のもの)、アヌビス神(Impw=アンプウと読む)、
 トト神(djhwty=「h」は強音、ジェフウティと読む)
 ※アヌビスにはジャッカル、トトにはトキの絵をつけて、最後に神の決定詞を忘れずに。


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 今まで挙げた例は、
 書きやすいものをピックアップしたものですが、
 実際は、そう簡単ではありませんよね。
 でも、仕組みを知ってしまえば、割とできてしまいます。
 キーワードは、「よく見るものを」、です。


●よく見る単語を覚えよう●

(1)王名=神名+決まり文句   

 なんだかできそうな気がしてきましたよね。
 では、好きな王名or神名を、ピックアップしてきてください。
 はじめは、見た目できるだけ短いやつにした方がいいです。

 例えば、「ラムセス」。聞いたことありますよね?
 ここで、後ろのは、「s」と読むことが分かってますよね。
 それから、一番前のは、太陽…ここでは太陽神を表す文字「ラー」。
 順番に読んでいる方は、少し前に、出てきましたよね。(王名ではこの形で頻出します)
 さて残りの、は、初めて出てきました、2子音文字の「ms」…誕生、といった意味です。
 これで、「ra-ms-ss」ラムセス、となるのが、お分かりでしょうか?


(2)組み換えしてみる    ▲ページトップへ▲

 さて、この「ラムセス」。
 実は、始めの(太陽神ラー)を、(知恵の神トト)にすると、
 なんと「トトメス(ジェフティメス)」になりますよ!

注意1:「s」の形とかは、表記によって変わるんです。
     実際、書いてる場所によって変わってますから、あまり気にし過ぎないように!!
   
   2:トト神の名前(ジェフティ)のように、見て分かるような字の場合、ふり仮名とか、
     ぜんぜんつかないことがあります。
     また、ふり仮名をつけるときも、全部つかないときがあって、そのへん、まちまちです。
     あまり厳密に考えず、
     字が分かれば、読めさえすればいい、くらいの気持ちで、テキトーにやるのが一番です。

   3:よく観察している方は、「s」が1つと、2つで、違うじゃない、と思いますよね。
     そうなんです。「ra-ms(-s)」と、「s」が1つだったら、「ラーメス」と読むんでしょうね。
     「tt(Djfwty)-ms-ss」と、こっちも「s」が2つだったら、「トトメセス」と読んだのかも。
     実際、本などで違っていることが。正解はないようなものですから…。
     (正確な音はわからないので)。


(3)よく見る単語をひろう    ▲ページトップへ▲

 上のように、
 王様の名前って、似たようなパターンがいくつかあるので、
 よく使われる単語を拾っておけば、
 組み合わせるだけだったりします(全部じゃないですが、けっこう出来ちゃいます)。

★よく見る文字:単語編
「ms(メス)」生まれる、の意。(後ろにsをふることが多い)
 例●ラムセス、トトメス、カーメス、イアフメス

 「nfr(ネフェル)」美しい、善い、の意。
 例●スネフェル、ネフェルティティ、ネフェルタリ(王妃など女性多)

 「htp(ヘテプ)」満足する、の意。
 例●アメンヘテプ、メンチュヘテプ、プタハヘテプ

または「mr(メル)」愛する、の意。
 例●メリィアメン、メリラー、メルエンプタハ

「ka(カー)」魂、生命力の意。
 例●メンカウラー、カーメス

★よく見る文字:神名編
 「raラー神」(太陽を表す文字ですが、王名の中では太陽神ラーの意。)
 例●メンカウラー、カフラー、ラムセス(即位名のほうでよく見られる)

 「Imn(n)アメン神」(普通は「神」の決定詞をつけますが、王名では省かれること多)
 例●アメンヘテプ、アメンエムハト、ツタンカーメン

 「pthプタハ神」(これも決定詞が省かれていること多)
 例●プタハヘテプ、メルエンプタハ


(4)名前の意味を考える    ▲ページトップへ▲

 だんだん、長い名前を見ていきましょう。
 重要なのは、
 今知られている名前は、読みやすく親しみやすい英語読みなので、
 古代エジプトの単語に直せるように、分解することです。
(やっていけば慣れます)
 その後、「神名」を見つけ、知ってる単語を見つけたら、
 余った字・言葉の意味を、訳から引き出してみましょう。

☆具体例1:メルエンプタハ
 分解「メル・エン・プタハ」=訳「プタハ神愛されし者」 
余った部分「nエン」=[前置詞]「〜(人)に」※よく出てきます。
 細かく言うと、この「n」があると、後に人が来るので、書かれた字が離れていても、○○神「に」愛された、とかなるんですね…。

☆具体例2:メンカウラー
 分解「メン・カーウ・ラー」=訳「ラー神の魂は永続する」
「mnメン」=「永続する」
 また、 
魂「カー」は三つ並べられている=複数形を意味する(三本の線がかかれることも)

☆具体例3:アメンエムハト
 「アメン・エム・ハアト」=「支配者アメン神
「hatハアト」=頭、先頭、最初

      +
「mエム」=[前置詞]〜(場所)にある
               ※よく出てきます。
=先頭にあるもの=支配者
 こういう、直訳ではよく分からないものを、ニュアンスで解釈する方法を学ぶのも、楽しみの一つかも?

☆具体例4:ツタンカーメン
 「トゥト・アンク・アメン」=「アメン神の生ける彫像」
アンク=生命、生きる※デザインとしてもよく出てきます
また、
トゥト=彫像


********

……こうして、かかわる文法や、単語を、覚えられますよ!

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 ここまでくると、だいぶ自信もついてきますよね。
 これからは、
 遺跡の壁や、博物館の美術品、
 本などの資料に書かれてあるものも、
 読める楽しみ、喜びを、味わってください!


●感覚を磨こう●

 さて、ここまでくれば、
 後は、広げていくだけです。
 自分の関心のある部分から、徐々に枠を広げましょう。

(1)即位名

 王の名なら、次は「即位名(ネスウ・ビト名)」も、やっていきましょう。
 これも、かなりパターンが決まってくるので、いい練習になります。
 また、博物館などで見るとき、こちらの名前を見ることも多いと思います。
 復習もかねて、行ってみましょう。

☆具体例:ツタンカーメン(即位名=「ネブ・ケペルウ・ラー」太陽神ラーの姿の主?)
 =「raラー」太陽神ラー
(「kprケペル」現れるの意)
   と三本線(複数を表す)
=「kprwケペルウ」姿
 =「nbネブ」主、すべて。※とてもよく見かけます

 このほか、「セテプstp」=選ぶ、「ターウィtawy(国、という字を二つ並べる)」=二国(上下エジプト)、「イブib」=心臓、」
 「ウセルwsr」=力強い、ついでに「wsert(wast)ウセレト(ワセト)」=ウセレト女神(テーベの都市女神)、「maatマアト」=真理(の女神)

(2)誕生名をもっと細かく

 即位名まで見たなら、
 後代(新王朝時代)の、なが〜い誕生名も、
 読み方が分かるようになってきます。
 ポイントは、
 ●神名で、一区切り。
 複数の神の名があったら、それぞれに「愛された」とか「満足する」とかがついてきます。
 「メリイ・メセスウ・ラー・アメン」、みたいなことにはなりませんし、
 「アメン・メセスウ、メリイ・ラー」にも、ならないみたいです。決まり文句があるのかも。
 ここは、パターンで覚えてしまったほうがいいでしょう。
 ●形容辞
 「神名+よく見る単語」以外の、たとえばヘカ杖の書かれている部分は、「形容辞」。
 ヘカ=支配者の意。テーベの支配者、とか。
 枠の外に書いていたものを、名前に関係してるからと、枠の中に入れるようになったんでしょうね…。
 ツタンカーメンの誕生名にも、ついてますよ。いろいろと…。

(3)有名な神名を、図像とあわせて。

 カルトゥーシュの中だけでは、
 ひとつの美術品に、二つくらいかもしれないので、
 比較的よく見る神名を覚えておくと、
 さらに楽しみが増えます!

 一番のお勧めは、やはり、オシリス神。
 棺やお墓や、埋葬品の多くに、この神の名が見られます。
 オシリス神自身のこともあれば、「故人」の意味で使われていることも(まあ、同じことですが)。

 あとは、アヌビス神、トト神、ホルス神、ハトホル女神、イシス女神、ネフティス女神……。
 壁画なら、それぞれの図像のそばに、名前が書かれることが多いですし、
 図像の特徴が、そのまま一字のヒエログリフで表され、王名に含まれることがあるので、
 アメン神・プタハ神・ラー神も同様に、図像をチェックしておくといいです。
 基本のシンボル(バーやカー、アンク、マアト、ケペル…)も、忘れずに…。

(4)単語を基本に

 楽しく進めるために、
 「あ、これ知ってる!」が、基本だと思っています。
 「知ってる(単語)」が増えていけば、
 間にある文法などにも、関心が行くでしょう。

 実はこの時点で、
 簡単な文法(?)も、学んでいますよね。
 王名を分解したり、組み合わせたり、訳とつき合わせてみたり、
 そんなことを重ねているうちに、感覚がいくらか磨かれているはずです。

 これ以降は、単語が載っていたり、文法が載っているような、
 本を開いてみてください。
 例文、簡単な文の訳など、
 今の時点で、かなり分かるものがあると思います。
 全部でなくても、かなり「理解できる」と思うんです。

 文法は、ここから、始まりで、いいんじゃないかと思います。

 ここまできたので、言っちゃいます。
 楽しく、とっつきやすく、をテーマに進めてきたので、
 無視していたのですが、
 文法を学び、文のひとつでも訳していこうとすると、
 文字の発音記号は、欠かせません。
 単語の区切りとかも、これで表現するからです。
 先に進むなら、ついでに覚えてくださいね。
 そうして「本当に読める」ようになりますから。

**********

 最後に、これからのための本を、少しご紹介します。

弥呂久「ヒエログリフをひらく」松本 弥・著
 このページで紹介した方法は、この本が一番ぴったりです。
 さまざまな王の誕生名と即位名、神々の図像と表記、よく見られる単語などを、
 大きく見やすいヒエログリフ書体でまとめてくれています。
 後ろに簡単な単語集があるのも、嬉しいです。


弥呂久「ヒエログリフ入門」吉成 薫・著
 これはもう、教科書ですね。
 整然と、余すことなく載っている、という感じです。
 初めてだと、とっつきにくいので、このページが簡単すぎると思ったら、こちらへ。
 巻末の、簡易辞書はもちろん、
 例題が多く、墓壁などピックアップして読解例を示してくれるのが、
 とても分かりやすく、お勧めします。


平凡社「古代エジプト語基本単語集」西村洋子・著
 以上の二冊が、同じ出版なので、
 どうしても、偏りが出てしまうと思われたら、こちらを。
 単語が多めに載っています。文法、壁画の読解などもありますが、
 ある程度文法を知ってからのほうが、役に立ちそうです。
 王名は、ホルス名まで載せていて、重宝します。
 ただし、ヒエログリフはほとんど手書きです。



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