古代エジプトの神話・物語
エジプト神話の特徴と、
その他、有名な物語をご紹介(編集中)。

神話の特徴 創世神話 神々の物語 神と王族 文学・教訓、その他 その他の宗教文献
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<神話の特徴>  ▲ページトップへ▲
 古代エジプトの神話は、
 ギリシャ神話のような、英雄譚や神と人間の駆け引きのようなものは、ほとんどありません。
 古代エジプトの人々にとって、神はやはり人とは隔てられた特別な存在であって、
 人間と対等になることはなく、そのためか、
 人間のような性格を、特に意識してはいなかったようです。
 しかし、神話の中で描かれる神々には、
 その行動と発言から、やはり性格というか、性質らしいものが知れることがあります。

 ところが神話そのものは、
 物語として読まれるために作られたのではなく、
 必要性があって編まれたものですから、
 登場人物である神々の発言や行動が、変化することがあったり、
 時に、とても不可解に感じられることもあるでしょう。
(例えば、ホルスとセトの争いでは、ホルスが自身を助ける母イシスの、首を切るシーンがあります)
 実はその不可解な部分にこそ、
 「そうならなければならない」宗教的観念(世界観の表現など)があったり、
 一つの宗教態勢にまとめられる前にもっていた、それぞれの神の性質が知れたりします。
 そこを知るとき初めて、神話の世界(古代人のもつ世界・宗教観)をいくらか理解することができる、
 そんな楽しみを秘めています。

 とはいえ、
 神話や神々については、
 その重要性が高いものほど「秘められて」いたので、
 たとえ文字にされても、神話内容はわざわざ描かず、
 好んで婉曲表現を多く用いていたので、実態が掴みづらかったりすることが多いようです。


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<創世神話>  ▲ページトップへ▲
古代エジプトには
 有名な創世神話が、場所(と、そこで信仰されている神々)によって
 主に三つありました。


●ヘリオポリス創世神話(世界を維持する九柱神)
神話の中心地:ヘリオポリス。古代名イウヌ(柱の都)
(下エジプト南。太陽信仰の中心地で、古王国時代から宗教の中心だった場所)
 主要な神  :九神(アトゥム(・ラー)、シュー、テフネト、ゲブ、ヌト、オシリス、セト、イシス、ネフティス)


 始め世界は水と泥が混じった「ヌン(混沌)」で満たされていた。
 そこから、丘「アトゥム(後にラーと同一視)」が自分で生まれ、立ち上がり、
 シュー(乾いた大気)とテフヌト(湿った大気)を生み出す。※1
 シューとテフネトは結びつき、
 ゲブ(地)とヌト(天)を生み出す。
 
 ゲブとヌトもまた結ばれたが、
 天と地が合わさったままでは太陽が通ることができないので、
 シューがヌト(天)を持ち上げ、二人を引き裂く。
 こうして、地は下にあり、天は大気に支えられて地を覆ったという。※2

 太陽は通れるようになったが、
 怒りが収まらず、ヌトに「360日どの日も子を産んではならぬ」と告げる。
 (360日は太陽暦で一年すべての日。)
 それを知った知恵の神トトが、月と盤上ゲームをして勝ち、
 5日の閏日(太陰暦)を得、ヌトが子を産めるようにする。
 そうして、閏日はそれぞれ
 オシリス、セト、イシス、ネフティスの誕生日となる。※3

 ※1・鼻から息を吐いてシュー、口からつばを吐いてテフネト、とする説や、
  テフネトは自慰行為によって生み出されたとされることがあり、
  後者の場合は、自慰というより象徴的な配偶者である「手の女神」との結びつきの結果、と表現される。
 ※2・ヘリオポリスの世界観を表わすゲブ・ヌト・シューの図がよく見られる。
 ※3・閏日の最後の一日に生まれた神は曖昧で、ものによって変わってくるし、言及されないことも多い。
 ウナス王のピラミッドテキスト(最古の宗教文献)ではトトだったが、ハロエリス(大ホルス)などとされることもある。


 
この創世神話は、このあとオシリス神話、ホルスとセトの争いに繋がる。

●メンフィス創世神話(創造神プタハ)
神話の中心地:メンフィス。古代名イネブ・ヘジュ(白の壁)
(古王国時代の首都。上下エジプトの境にある)
 主要な神  :プタハ(ここではプタハ=タァチェネン)


 はじめにヘリオポリス神学をもちだし、
 ホルストセトの争いについて書かれ、
 メンフィスが上下エジプトの境にあり、この二神のいさかいを治めたと書かれている。

 次に、ヘルモポリス神学をももちだし、
 ヘリオポリスの「はじめの神」であるアトゥムの、さらに父であるとして、
 混沌を象徴する「ヌン(男神)」と「ナウネト(女神)」とプタハが同一と書かれている。

 プタハは九柱の神々の「心(臓)と舌」であり、
 神々のカーに生を与えたものであり、
 ホルス(ヘリオポリスの神話で重要な神)の心、
 トト(ヘルモポリスの神話で重要な神)の舌である、というように、
 プタハ神の身体の一部がそれぞれの神である、とされる。

 もっとも特徴的なのは、
 人を動かすのは心であり、それを実現させるのは舌(言葉)である、という思想で、※1
 さまざまなものが存在することが、心と舌によるのであり、
 その舌と心こそが、プタハ神である、とされている。


※1・よく旧約聖書の創世記と比較される。

 シャバカ石と呼ばれるものでのみ伝わる神話。石はかなり後代(第25王朝)のものだが、元は古く、虫に食われたので写したと(この石の碑文に)書かれている。
 シャバカというのは、当時の王(エチオピア出身)。文体が古いらしいが、古く見せて書かれているかもしれず、いつまとめられたものか分からない。
 この石は、なんと後の人々に石臼として使用されていたらしい。大英博物館所蔵。
 この項は主に、筑摩世界文学大系1『古代オリエント集』杉勇訳、を参考にまとめた。


●ヘルモポリス創世神話(八柱(四組)の原初神)
神話の中心地:ヘルモポリス。古代名ケメヌウ(8の都)
(上エジプト(中部)、トト神の信仰地)
 主要な神  :?(下記の八柱)

 この世がまだ天も地も光もなく、混沌としていたころ、
 その混沌の中に、原始の性質が含まれていた。

  原始の水である、男神ヌンと、女神ナウネト
     暗闇である、男神ケクと、女神ケクウト
     無限である、男神ヘフと、女神ヘフウト
見えないものである、男神アメンと女神アメント※1

 これらの八柱の神(男神はカエルの頭、女神は蛇の頭を持ったもの)が
 あるとき、丘を生み出し、※2
 そこに神々の生み出した卵を置く。
 その卵の中から、太陽が生まれ、
 すべてが始まったのだという。

 ※1・最後の一組は諸説あり、「否定」であるニアウとニアウト、もしくは「欠乏」であるゲレフとゲレフトなど。
 原始の八柱神は、世界の存在「以前」のもので、秩序に反するものを表わしている。
 ※2・生み出したのが睡蓮の花であるとされることも。どちらにせよ、その中に生まれたばかりの「太陽の子供」を生じさせる。

 この神話と間違いなく関連しているらしい「八の都」の都市名は、第五王朝から知られるが、
ほとんどの資料が後代の物であり、どこまでさかのぼるのか分からない。


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<神々の物語>
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 神話、と呼ばれる、
 神様が主人公となる物語を集めてみました。
 それぞれの神のもつ力や役割を説明しているものが多いです。


●ホルスとセトの戦い(上下エジプト統一)

 オシリスを殺害し王位を奪ったセトに対し、オシリスの息子ホルスが復讐する(王位を取り返す)という話。
 復讐は基本、ホルスの母でありオシリスの妻である女神イシスの助けの上で成功する。
 日本で言う神楽のようなかたちで上演されていたらしく、物語として読むのはオススメできない。
 セトとホルスはさまざまな形で争い、多くの困難を克服し正当な王位についたことを繰り返しによって表現している様子。
 上エジプトをセト、下エジプトをホルスとして争いを描き、最終的にホルスによって両地がひとつになる。
 中には、ホルスの目(ウジャト)の負傷と回復を表現ている部分もあり、月の満ち欠けを説明している。

 初期王朝時代(特に第二王朝)の、部族間の争いをいくらか反映しているのではないかとの見方が強い。
 (※ホルス神もセト神も上エジプトの部族神であるらしい)

●オシリス神話(死後の再生)

 地上の王であったオシリスが、弟セトによって殺され、
 遺体がバラバラにされ流されたものを、妻イシスが集めて再生し、子ホルスをもうける話。
 上の、ホルスとセトの戦いと切り離せない。
 再生したオシリスは、死者の世界の王となる。

 ピラミッド・テキストの描かれる第5王朝末にはすでに確立していた神話らしい。
 が、どこまで確立していたかは分からない。

●セクメトの人類抹殺(ラーの目の女神)

 長く地上の王を務めていた太陽神ラーを人間たちが軽視したために、
 ラーが怒り、その目から「強き女神」を生み出し人類に報復する話。
 ラーの気がおさまっても人間を殺すことを止めない女神に、
 赤く染めたビールを与え、血と勘違いした女神が飲んで酔っ払い、おとなしくなるという話。

●イシスの魔術(真実の名と魔術)

 イシスが太陽神ラーの真実の名前を知り、その最強の力を手に入れる物語。


●遠方の女神(増水とその富を呼び込む)


 イヌヘルト神がトト神と共に、ラーの娘(目)を南方から連れ戻すという物語。


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<神・王族>   ▲ページトップへ▲
古代エジプトの王族と神が関わるお話を集めてみました。
 人間の視点から描かれ、古代エジプトらしさが伝わる物語。

●ウエストカー・パピルス(三人の王子と魔法使い)

 退屈しのぎに、クフ王が王子たちに物語りさせ、
 王子たちは順番に、過去の王に仕えた賢者たちの奇跡を話すが、
 最後の王子が実在の賢者「ジェディ」を王に紹介し、
 王はジェディの知っているという「トト神の秘密の部屋」の設け方をたずねる。
 ジェディは、それはクフ王ではなく、次の王朝が新設された時になされるのだと予言するという話。

 前後が抜けており、詳細は不明。
 だが、おそらく第5王朝の王権を正統なものとみなす意図があったのではないかと考えられている。

 この物語が書かれたパピルスは唯一これだけである。


●サトニ・ハームス物語(ミイラとトトの書)

 トト神の英知の結晶である書を盗み、最高の賢者になろうとする王子を、
 過去それを行おうとして亡くなったもののミイラがたしなめる話。

 主人公サトニ・ハームス(セトン・ハムウェーセ)はどうやらラムセス2世の息子である王子カーエムワセトらしい(歴史家として有名)。
 サァニスウト「王子」・カー(エ)ムワセト。プトレマイオス朝のものと推測されており、文字はデモティックだった。


●バフタンの王女とコンス神

 バフタンの王女の病を治すために、コンス神(の像)が担ぎ出され、
 見事病を追い払うという物語。
 神像に宿る神性は神の力の一部である、という見方が興味深い物語。

 カルナックのコンス神殿にあった石碑に描かれたもので、
 石碑そのものはプトレマイオス朝のものらしいが、内容はもっと古く、新王国時代のものかもしれない。


●二人の兄弟(不実な妻の話)

 アヌビス(アンプ)とバタという兄弟の話。
 バタも神の名であるようだが、あまり伝わっていない。
 内容は、さまざまな民話的要素が合わさっているため
 神話とはいえないかもしれない。


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<文学・教訓、その他>     ▲ページトップへ▲
 神々は関係ありませんが、
 特に有名なものを紹介しておきます。

●シヌヘの物語
中王国時代のパピルス。
 古代エジプトで、有名だったらしく、書き写した陶片なども多数見つかっている。
 最もエジプトらしいといわれ、古代エジプト文学の代表とされている。


●雄弁な農夫の物語
中王国時代のパピルス。
 四種類知られており、当時の書記生が手本にしたらしい。
 話の筋は簡単だが、言い回し・比ゆ表現などを繰り返している。



●難破した船乗りの物語
中王国時代のパピルス。

●生活に疲れた男の魂との会話
第一中間期の文学。厭世的で、古王朝時代の崩壊が当時の人々に大きな衝撃を与えたことがよく見える。
価値観の崩壊と、新しい価値観の模索がテーマとされる。


●プタハヘテプの教訓
第5王朝時代末。現存する最古の、かつ典型的な教訓。
後世まで伝えられ、愛されていたもの。


●ウェンアメン(ウナモン)の航海録
 第3中間期のパピルス。
 公文書と考えられているが、物語風になっている。国勢なども覗くことができる。


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<その他の宗教文献>     ▲ページトップへ▲
古代エジプト人の来世・世界観、思想は
 主に王族の墓壁、そして死者の書などの宗教パピルスに描かれてきました。
 ごく簡単に紹介します。

●ピラミッド・テキスト
 古王国時代第5王朝〜・ピラミッド(王墓)の壁
(ウナス王、ペピ一世のピラミッド内など)


王のための、復活再生の呪文。
 王が死後オシリスとなり、来世で再び王として君臨すること、あらゆる神と同等の立場となること、
 昼は太陽神ラーと共に天を巡ること、
 夜には「不滅のものたち(北極星周辺の星)」となって永遠に天にあること、などを
 繰り返し宣言したもの。
 同じような呪文を繰り返すことで、実現する力が強くなると考えられていた。

 挿絵などがなく文字だけで、
 主語が王自身であるものと、王を二人称で唱えるものが混ざっており、
 後者は、実際に葬儀で唱えられた呪文を書き記したものだろうと考えられている。
 というのは、『ホルスの目を受け取れ』として、献酒や香、ナトロンなどの鉱物名が書かれており、
 それらがミイラ作りの際に使用されたと考えられるため。

 また、呪文の内容から、
 ミイラ作りをまだしていない時代の呪文も混ざっており、
 起源が先王朝時代にさかのぼると考えられている。

 まだ完全には解読されていない。

●コフィン・テキスト
 第一中間期〜・貴族の棺

ピラミッドテキストから派生し、
 王ではなく、貴族が自分自身もまたオシリスとなって復活できると信じ、
 呪文を棺に書き記したもの。

 文字だけでなく挿絵も加えられるようになり、
 王だけでない、という考えと共に、
 復活できるかどうかの審判の場が加えられ、マアトの天秤が描かれる様になった。

●死者の書
 第二中間期〜・死者の遺体に添えられたパピルス
(アニのパピルス・フネフェルのパピルスなど)


 コフィンテキストがさらに一般に浸透したもので、
 今までどおり、死者がたどる復活までの道と、危険を避けるため、供物を得るための呪文、
 それらが、挿絵をふんだんに用いて表現される。
 故人に妻が付き添っているものも多い。

●大地(アケル)の書
 新王国時代〜・王の墓壁
(セティ1世・ラムセス6世など)以下同




●昼と夜の書


●門の書、洞窟の書

 冥界を12の時の間に分け、それぞれの間の入り口としての門や、洞窟の名称、そこにいる神々の名称などを記している。

●アムドゥアトの書

 アムドゥアト=「冥界にあるもの」。
 冥界の12の時を太陽神がわたる物語。
 それぞれの時間、洞窟の案内人、そこにいる神々の名と共に
 復活に至るまでの太陽神の様子、冥界の神々の様子、太陽神が神々にかける言葉などを挿絵入りで記す。
 

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