4》山岳戦

「戦車なんて最初だけで、後はぜんぜん役には立たなかったんだよ」と、ウハチさんは言います。戦車や車両の大半をはじめの方の戦闘で破壊されてしまいます。

すでにアメリカ軍の持つ兵器の規模や威力は、日本軍のものをはるかにしのいでいました。制空権も完全にとられてしまってからは海からの補給路が絶たれ、ルソン島は完全に孤立した戦場になってしまったそうです。

だんだん戦場は山岳地帯へ移って行きました。車両も燃料も少なくなくなってきてからは、前線へ物資を運ぶのはすべて人力です。ウハチさんたちは重い砲弾や弾薬を肩や背に担いで山の上にある陣地に担ぎ上げるのですが、広い道を歩いていたのでは敵のアメリカ軍の飛行機に狙い撃ちされるので、ジャングルの中の道なき道を夜になって運び上げたといいます。

「おれたちは何度も峠まで荷揚げをしたんだけど、爆撃がものすごいんだよ。昼も夜もめちゃくちゃに落とすんだ」 ある時砲撃から逃れようと、ウハチさんは急いで道の脇に掘られた塹壕に飛び込んだのですが、背中に砲弾の破片を受けてしまいます。
「痛いなんて言ってられなかった」その破片は、ずっと後アメリカ軍の軍病院で抜き取られるまでそのままでした。

「あんまり爆撃がすごいから、恐ろしくなって穴から飛び出すやつが出てくるんだよ。初年兵なんか耐えられなくて、頭が変になっちゃうんだ」経験が少ない若い兵隊に多かったそうです。
「こっちはそうなるのが分かっているから、戦闘が始まったら初年兵の服をつかんで押さえつけておくんだよ。それに逃げ出したくても後ろでは憲兵が銃を構えて逃げ出さないように見張っているんだから」

わたしたちが中庭を眺めながら話をしている縁側の下には、暑さをさけて犬がずっと潜り込んでいました。