7》斬り込み

「食べられるものはみんな大抵のものは食ったよ。蛇も結構うまいんだ」と、ニヤッと笑って話す口元が、少し得意そうで若々しくも見えました。

しかし、夜のジャングルの中を音を立てないように敵陣に乗り込んで行く<斬り込み>の話になると、ウハチさんの目がギョロギョロとしてきます。ウハチさんの生々しい記憶が呼び戻されて、中庭の芝生の上に映し出されているようなのでした。

<斬り込み>とは、少人数でジャングルの中を敵の探知機や集音マイクのバリアーをかいくぐって、敵陣に奇襲をかけることです。成功率も生還の確率もかなり低かったようですが、戦車も車両もが破壊されてしまって兵隊も減って行く中考え出されたゲリラ的な作戦です。

「上官のやつら、おれたちだけに何度も斬り込みを命令するんだよ。やっと生きて帰って来たのに、また『斬り込みに行ってこい』ってね」
ウハチさんが上官に睨まれるようなことを何かやったわけでもないようなのですが、もともとの指揮官が死んでしまったり、兵隊が減って部隊が構成できなくなったりすると、他の部隊に編入されたり吸収されたりして、直属の上官が変わることもあります。そうなると、新しい指揮官と馴染みのない兵隊に危険な任務が割り当てられるということも起きたようです、そこは軍隊といっても人間の集団ですから。

毎日が死の恐怖との戦いだったわけで、そんなぎりぎりの精神状態で戦っているうちに気持ちが不安定になる人や、指揮官のなかにだって、現場を放棄して逃げ出してしまう将校さえもいたのだそうです。

「敵の配線ケーブルなんかにも触らないように、じりじりと慎重に進んで行くんだ。ほんとうにゆっくりしか進まないんだよ。キャンプがすぐ見えるところまで来て、明るくなるのを待つんだ。戦車のそばでタバコを吸いながらしゃべってる黒んぼが何人か見えたから、そこに向かってみんなでイチ、二ッ、サン、で一度に手榴弾を投げたらあっと言う間にみんな逃げちまって、誰もいなくなったよ」

アメリカ軍の戦い方をよく知っているウハチさんたちは、逃げた兵隊たちがすぐには戻ってこないことが分かっていたので、それからキャンプの中に残された食糧を探します。
「まずレーションを探すんだよ。ずっと夜通し歩いて来たから腹が減ってるし、いつも碌なもの食べてないんだからレーションは最高のごちそうだった。タバコやガムまで入ってたんだから」
話しながら、ウハチさんは両手でお盆のような長丸の形を作って見せたのです。缶詰になっているランチというようなもののようです。話を聞いていると、まるで地獄の中のピクニックみたいな、ちぐはぐな場面が想像されました。 しかしその手榴弾の爆発の先には死んだアメリカの兵隊がいたのではないか?と思いながらも、聞き直すことはしないで黙って聞いていました。

何度も斬り込みに行き、敵兵がすぐ間近にいたことも一度や二度ではない戦闘で、殺したり殺されたりという中にいつもいたはずのウハチさんが、その凄惨な事実に触れたのはこの時一度きりでした。