14》輜重隊(しちょうたい)

しばらくは、ウハチさんはルソン島でもずっと戦車に乗り込んでいたのだと思い込んでいました。
「戦車に乗っていたんだよ」と最初に言われた言葉を、わたしが単純に想像してしまったのです。それまで軍隊のことは何も知らなくて、映画やテレビで見たものからのイメージしか持ち合わせていなかったのですから。機甲師団にはいろんな車両があることや、その得意とする戦術についてもはじめて聞きました。

そして話がだんだん細かいことに進んで行った時に、
「おれは輜重隊にいたんだ」と聞かされて、
「シチョウタイって、何ですか?」と、話の流れを中断してしまいました。
「輜重隊はね、戦車隊の後方支援をする任務なんだ。キャタピラ式の装甲車やトラックで前線に弾薬やら食糧なんかを運ぶんだよ」
ウハチさんがいた輜重中隊は、記録を調べてみると兵員100名ほどに、装軌貨車1台とトラック32台があったと記録されています。全員が車に乗って移動するのですから、車が故障した時にはウハチさんの電気の知識が役に立ったかもしれません。

「じゃあほんとは、ウハチさんは敵と撃ち合うはずのない部隊にいたんですね」
「戦闘が激しくなったらそうは言っちゃあいられないよ。部隊がサラクサク峠に転進してからは、ゲリラや偵察機やらに狙われていて、もし見つかったら次の日は爆撃されるか砲弾の雨だ。動けるのは夜の間だけだった」

サラクサクの作戦では、ずっと荷役人足のように弾薬と食糧を山の上にある前線に運ぶ仕事を何ヶ月もしたそうです。激しい戦闘が続く山中を、木の枝でこしらえた手作りの背負子に満載した弾薬や食糧を背負って、サラクサク峠に向かう1、500メートル級の山の峻険な岩場やジャングルの続く暗い夜道を歩いたのです。

今わたしたちの目の前の老年のウハチさんは、わたしと同じくらいの背丈で155センチほどでしたから、決して頑健な体格には見えませんでした。