18》接近戦

「それでもおれは砲弾の破片を受けただけで助かったんだからね。生きて帰れたこと自体ががめずらしいんだよ。敵に包囲されている陣地の荷揚げなんかだと、3人で出かけて帰りは2人になっちゃう」
「つまり一人は途中で死んだんですか?」
「そうだよ。荷揚げのルートにも砲弾が打ち込まれていたし、最前線の陣地なんかには近づくことだってほんとは無理なんだ。アメリカ兵の見張りが近くでうろうろしてるのが見えるんだもの」
「そんなに接近して戦っていたんですか?」
「手榴弾の投げ合いとか、銃剣突入とか毎日だよ。工兵隊なんかは坑道作戦をやってたんだ。敵陣のすぐそばまで穴を掘っていって、一挙に爆破するというやり方だよ」

同じことをアメリカ軍もやっていたそうですが、それを察知して相手より先に掘り進むのです。音を立てずに息を殺して暗い穴蔵に入っている兵隊たちの姿が浮かんできました。

「でもそんな所にいつまでもいたらみんな死んでしまうじゃないですか。撤退命令というのはぎりぎりまで出ないものなんですか?」
「そりゃそうさ。司令部の考えは、前進基地とはまた違うんだよ」戦闘が激しくなればなるほどありそうなことです。
「逃げ場を失ってしまって玉砕した陣地もあるんだ」

危機的な状況の中で、司令部はいろいろと焦ってはいたようです。急に現場の指揮官が後方の司令部に呼び戻されたり、反対に自ら司令部に戻ってしまう指揮官もいました。そういう指揮官に対しては、懲罰としてさらに危険な戦闘地域に配置換えされたりしたということです。